匠の聚フォトコンテスト2015審査会概要
審査日時 平成27年10月1日(木)午後1:00~
審査場所 川上村役場第1会議室
審査員 写真家 /百々 俊二
写真家 /内山 りゅう
アートディレクター/猪熊 裕行 《敬称略・順不同》
審査員講評(総評/要約)
写真家/ 百々 俊二氏
表現としての色管理がずいぶん改善されてきたように思います。しかしモノクロについては色の部分で少し気になった部分があって、銀塩と違ってデジタルの場合はトーン幅が少し小さいというのはありますが、カラーで撮って出力時にモノクロに変換するのは良くないですね。そうしなければもっと深みのあるモノクロになる筈です。最初からモノクロで表現する前提ならば、撮影時には余計な色を排除している目になっていないといけません。また繰り返しの指摘になりますが、足繁く通われて作品づくりをされている方と、そうでない方との作品の差、いわゆる時間量の差が大きく作品に出てきています。例えば祭りの写真でもその日だけではなくて、その後に訪れてみたり、これがどういう意味で成立しているのかなど、伝統というのはそこに根付いている何かがある筈です。何度も足を運んでいるうちに人と出会ったり、普段目に留まらない世界が見えたり、様々な情報が入ってくるものです。またネイチャーに関しては、類似的なものが圧倒的に多いので、どうしても個別性がなくなってしまいますね。少々シャッタースピードを変えても、クローズアップしても大体同じような似た作品になりますね。今回は滝を捉えた作品が多く選ぶのが難しかったので、もう少し工夫が欲しいところですね。このコンテストは単に順位を競うものではなく学習の機会であって良いと思いました。
写真家/ 内山 りゅう氏
前回は色について強く言いましたので全体的に違和感を覚えるような仕上がりの作品は少なく、むしろ質の高さに驚いた作品もありました。今回気になった点としては、組写真において「組む意味」が伝わりにくい作品が多かったことと、川上村らしさをもっと出して欲しいと思ったことです。特に後者に関して、今回は類似作品が多く余計にそう感じたのかも知れませんが、せっかく川上村に足を運ばれているのだから、川上村の良さとは何かというものをもう少しじっくり考えて見て頂けたら違うものが撮れるのかなという風に思いました。
アートディレクター / 猪熊 裕行氏
毎年申し上げていますが、良く似た作品が多いという印象です。昨年11月に「第34回全国豊かな海づくり大会」の放流歓迎行事会場として川上村が選ばれ、天皇皇后両陛下がご臨席され、親アユとアマゴの稚魚を放流されたことは記憶に新しいところです。後にその情景を詠まれた御製碑には「若きあまごと 卵もつあゆを 放ちけり 山間(やまあひ)深き 青き湖(うみ)辺に」と刻まれています。私なりの解釈になりますが、おそらくこの詩には川上村に対する想いが込められていて、特に若きあまご(=若い世代)がしっかり育ち川上村の未来を担っていって欲しいという想いを込められていらっしゃるのではないかと思います。そういう意味で今後、技術的なことはもちろん重要ですが、作品づくりに対するアプローチとしての面白さやメッセージ性を感じさせる作品にも期待したいところです。
フレーミングの仕方と表現構造に工夫が欲しい。何を入れ、何を排除するか、または自分の感動を戦略的・技術的にどう見せるのかというのが大事になってきます。レンズの選択や光の扱い方など、自分が感じたもの以上の感動を相手に伝える工夫ができるか、自分の視点をきちんと持っているかということです。選外の作品も技術は高いものが多かったのですが、美意識が高い故に、似たようなアプローチに繋がったり、上手なのに面白味が無いという結果になります。美意識が高いことが悪い訳ではありませんが、突き抜けるような仕上がりには届かないのが現状です。
◆主催/川上村・匠の聚・森と水の源流館
◆後援/川上村観光協会
◆協賛/富士フイルムイメージングシステムズ株式会社・株式会社トミカラー・株式会社写真工房匠
◆協力/奈良ヤクルト販売株式会社・NTT労働組合奈良県グループ連絡協議会・一般財団法人地域の未来創造機構